201511/28
前代未聞の異色作『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』11月28日(土)より劇場公開!
雑種犬の飼い主のみに重税を課す悪法によって保健所送りになった犬たち...。闘犬ブローカーに酷使されながら試合を強いられる犬たち...。今、虐げられた野生の本能が、冷酷な社会に牙を剥く!!
本作は第64回カンヌ国際映画祭の「ある視点部門」でグランプリを受賞した、非常に独創的で異色極まりない鮮烈な作品だ。
ガーディアン紙は「犬版『猿の惑星』」と絶賛したが、『猿の惑星』と決定的に違うところは、驚くべきことに本作に登場する200匹以上の犬たちはみんな本物だということ。
しかも、映画やドラマ用に長期間に渡って調教された犬ではなく、保健所に収容されていた殺処分待ちの雑種犬である。彼らはわずか4ヶ月しか指導を受けていないにも関わらず、素晴らしい演技を見せてくれる(トレーナーを務めたテレサ・アン・ミラーという女性はこの間、1日24時間・週7日体制で犬たちと一緒に過ごし、絆を深めた)。
主役のハーゲンを演じたルークとその相棒を演じたボディという名の2匹に犬の演技は感嘆に値するほどで、とても「素人」とは思えない。犬が好きな人ならこの2匹の絡みを見ているだけでニヤニヤしてしまうだろう。
ブタペストの街を疾走する犬の大群のシーンで幕を開ける本作。
その直後に挿入されるのは牛の屠殺シーンである。思わず2007年から2008年にかけて半年以上に渡ってロングラン上映された問題作『いのちの食べかた』がフラッシュバックしてしまったが、本作『ホワイトゴッド』はメッセージ性の強い風刺的な社会派作品であると同時に、スリリングでエキサイティングな寓話的ドラマでもある。
本作の監督を務めたコーネル・ムンドルッツォも「道義的な問いを突きつける内容だが、観客にはドキドキしながら観てほしい」と語っている通り、あくまでエンターテインメントの範疇で物語は進行してゆく。
主人公である美少女リリを演じるのは弱冠12歳のジョーフィア・プショッタ。本作がデビュー作とは思えないほど力強く、それでいて繊細な演技を披露している。本作の何とも言えない不思議な魅力は、この子によるところがかなり大きい。
リリと犬、リリと父親、学校、社会.... というように物語は拡大していくが、リリは口数が少なく何を考えているか分かりにくい。その感情や思考の余白部分には、「感情移入するのではなく、リリを通して鑑賞者各々の視点で対象を見つめ直してほしい」という製作者サイドの思惑があるのではないだろうか。
静と動が混在しカオス渦巻く本作であるが、野生の本能が爆発する犬たちが反乱を起こすクライマックスの躍動感には凄まじいものがあり見入ってしまう。
もう一つ、野生の本能を描いているのが闘犬のシークエンスだ。闘犬といえば本作と同じくカンヌに衝撃を与えた2000年の『アモーレス・ぺロス』(2015年のアカデミー賞で最多9部門ノミネートを果たした『バードマン』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のデビュー作)を思い出さずにはいられない。
本作では一歩踏み込んで、闘犬のトレーニングの残酷な実態が描かれているのだが、こんな野蛮なことが今も世界のあちこちで行われていると思うと胸が痛む・・・。
本作はカンヌで「ある視点部門」グランプリともう1つ、「パルム・ドッグ賞」という聞きなれない賞を受賞している。これは優秀な演技をした犬に贈られる賞で2001年から始まった。『ドッグヴィル』のモーゼスや『カールじいさんの空飛ぶ家』のダグなどが歴代の受賞者だ。
いろんな人に観てほしい画期的な衝撃作だが、犬や猫と一緒に暮らしている人たちには特に観てほしい。いつまでも記憶に鮮明に焼きつく、きっと特別な1本になるはずだ。
ちなみにホワイトゴッドに出演した犬たちはみな撮影後に引き取り手が見つかったとのことで、犬好きの筆者も安心しました。
ホワイト・ゴッド公開予定情報(大阪)
監督 : コーネル・ムンドルッツォ
出演者 : ジョーフィア・プショッタ、シャーンドル・ジョーテール、ルーク&ボディ
【シネ・リーブル梅田】 11月28日(土)〜
所在地:〒531-6003 大阪府大阪市北区大淀町1-1-88梅田スカイビルタワーイースト3・4F
電話番号:06-6440-5930
FAX番号:06-6440-5932
Eメール:cl_umeda@ttcg.jp
【シネマート心斎橋】 11月28日(土)〜
所在地:〒542-0086 大阪府大阪市中央区西心斎橋1-6-14ビッグステップビル4F
電話番号:06-6282-0815
ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(Filmarks)
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